妊娠中に葉酸が大切と知っていても「なぜ必要なのか」「いつから摂ればいいか」までは知らない方も多いのではないでしょうか。
日本では、妊娠中の葉酸不足による赤ちゃんの先天的な病気が増加しており、日本小児神経外科学会も声明を発表しています。
この記事では、葉酸不足が赤ちゃんに与える影響と、妊娠中の必要量、摂り方のポイントを整理します。
日本小児神経外科学会が妊婦さんの葉酸不足を注意喚起
日本小児神経外科学会は2022年、妊娠中の葉酸不足に注意を促す声明を発表しました。
妊娠中の葉酸不足が赤ちゃんの先天的な病気につながるリスクは以前から知られているものの、日本ではむしろ増加傾向にあるためです。
FFI(Food Fortification Initiative)の報告によると、2019年現在、世界では77カ国が、穀類への葉酸の添加を義務化しています。
葉酸摂取を制度として底上げした結果として、赤ちゃんの先天的な病気の発生率は、南アフリカで31%・カナダで46%・アルゼンチンで50%低下しました。
一方、日本においては、葉酸の摂取が個人の意識にゆだねられています。
ある研究では、妊婦さんの60〜70%が葉酸サプリの重要性を知っているものの、実際に妊娠前から摂取している方はわずか15〜20%程度と報告されています。
| 葉酸サプリの重要性を知っている | 60〜70% |
| 妊娠前から葉酸を摂取している | 15〜20% |
参考:佐世正勝・藤野俊夫|山口県の妊婦における葉酸に関する知識の調査. 周産期新生児医学会雑誌 2017;53:99-103
葉酸を普段の食事だけで補うのは難しく、特に妊娠中は摂取すべき量が多いため、意識して摂らなければ不足してしまいます。
妊娠中の葉酸不足は赤ちゃんの命に関わるおそれもあるため、十分に理解を深めておきましょう。
そもそも葉酸とは?
葉酸は、赤血球の生成を助けるビタミンB群の一種であり「造血のビタミン」とも呼ばれます。
細胞の生産・再生を助ける働きもあり、赤ちゃんの成長に欠かせない栄養素です。特に細胞分裂が盛んな妊娠初期は、赤ちゃんの正常な発育のために葉酸が重要な役割を担います。
葉酸はおもに2種類に分類され、からだへの吸収効率が異なります。
| 種類 | 内容 | 生体利用率※ |
| 食事性葉酸(ポリグルタミン酸型) | 食品に含まれる葉酸 | 合成葉酸よりも低い |
| 合成葉酸(モノグルタミン酸型) | サプリメント・栄養強化食品などに含まれる葉酸 | 食事性葉酸の約2倍 |
※ 生体利用率:栄養素が体内で分解・吸収されたのち、組織で利用される割合
食事に含まれる「食事性葉酸」は、食材の種類や調理方法によって吸収率に差があります。一方、サプリメントに含まれる「合成葉酸」は吸収が安定していて、必要な量を補いやすいのが特徴です。
葉酸は水溶性ビタミンであるため、体内にためることができません。過剰分は尿として排出されてしまうため、食事とサプリメントを組み合わせながら補うことが大切です。
妊娠中の葉酸不足による赤ちゃんへの影響
妊娠中に葉酸が不足すると、赤ちゃんが神経管閉鎖障害を発症するリスクが高まります。
神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄のもとになる神経管がうまく閉じないことで起きる「先天性の病気」です。

神経管閉鎖障害にはいくつかのタイプがあり、以下2つが代表的です。
- 無脳症:神経管の「上部」が閉じないことで起こる
- 二分脊椎:神経管の「下部」が閉じないことで起こる
日本ではこれら2つの発生頻度が増加しており、大きな問題となっています。
無脳症
「無脳症」とは、脳や頭蓋骨の一部が形成されないまま、赤ちゃんが生まれてくる病気のことです。
無脳症は、脳のもととなる神経管の上部がうまく閉じないことで起こります。
大脳や前脳が欠けると、考えたり呼吸したりするための機能が育たないため、生命を維持できません。残念ながら治療法はなく、流産・死産となるか、出生しても24時間以内に亡くなってしまいます。
二分脊椎
二分脊椎とは、背骨がうまく形成されず「脊髄」が外に飛び出してしまう状態のことです。
二分脊椎は、神経管閉鎖障害のなかで最も多いとされています。
脊髄は、脳からの命令を全身に伝える役割を担う部分です。脊髄が外に飛び出してしまうと、以下のような障害が起こります。
- 足が動かせなくなる
- 感覚が麻痺する
- 排泄コントロールができない
これらの神経障害を伴うと、生涯にわたってケアが必要になります。
妊娠中にとるべき葉酸の目安量
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、成人女性の葉酸推奨量は1日240μg(食事)であるのに対し、妊娠中は時期によって推奨量が変わります。

妊娠初期
妊娠初期の葉酸の推奨量は、1日あたり食事から240μg、サプリメントから400μgです。
神経管が形成されるのに重要な時期は、妊娠が成立してからおよそ28日までの期間です。この時期にママが葉酸を十分に摂っていると、神経管閉鎖障害の発症リスクを大きく軽減できるとされています。
妊娠前から葉酸を摂取すると、神経管閉鎖障害の発生リスクを40〜80%程度下げられるとする報告もあり、最近は妊娠を考えたときからの摂取が呼びかけられています。
妊娠前から摂取できていなくても、慌てる必要はありません。妊娠に気づいたらできるだけ早く葉酸サプリメントを摂り始めましょう。
神経管閉鎖障害のリスクを減らすためには、妊娠12週までしっかり葉酸を補給する必要があります。
参考:近藤厚生ほか|葉酸による神経管閉鎖障害の予防:発生率,リスク因子,葉酸サプリメントの摂取,行政への要望(日本周産期・新生児医学会雑誌, 2021, 57巻1号, p.8-18)
妊娠中期〜後期
妊娠中期・後期は、1日480μgの葉酸の摂取が推奨されています。
食べ物から十分な葉酸を摂取できれば、サプリメントは必要ありません。緑黄色野菜や豆類など、葉酸を多く含む食品を意識して取り入れましょう。
体調が悪く食事が進まないときには、サプリメントで補給するのも一つの方法ですが、食事がしっかり摂れないと他の栄養素も不足しがちです。
自己判断でサプリメントに頼らず、医師や助産師に相談しましょう。
葉酸を効果的に摂取するポイント

葉酸を効率よく摂るには「食品」と「サプリメント」を組み合わせることが大切です。
葉酸を含む食品や調理の仕方、サプリメントを選ぶポイントを押さえましょう。
葉酸を多く含む食べ物を摂る
葉酸を多く含む食品には、ほうれん草・ブロッコリーなどの「緑黄色野菜」、納豆やえだ豆などの「豆類」があります。
果物なら、いちごに多く含まれています。
| 食品 | 1食の目安 | 葉酸含有量 |
| ブロッコリー | 約50g | 約110μg |
| ほうれん草 | 約60g | 約126μg |
| 納豆 | 約45g(1パック) | 約58μg |
| えだ豆(ゆで) | 約30g | 約78μg |
| いちご | 約75g(5粒) | 約68μg |
参考:文部科学省|食品成分データベース(八訂増補2023年)から算出
ブロッコリーや納豆は、1年中手に入りやすくおすすめです。調理も簡単なため、毎日の食事に取り入れやすいでしょう。
葉酸は水に溶けやすく、茹でたり水にさらしたりすると減少しやすいため、調理の仕方にも工夫が必要です。
緑黄色野菜を調理するときは、茹でるのではなく蒸したり電子レンジで利用したりすることで、水への流出を抑えられます。スープや煮込み料理にすれば、溶け出した葉酸をまるごと摂取できます。
サプリメントの選び方
葉酸サプリメントを選ぶ際は、1日分で400μgの葉酸を摂取できるかをチェックしましょう。
1日400μgの葉酸が摂取できれば、つわりで食事が偏りがちな時期でも必要な量をカバーできます。
合成型と天然型のどちらを選んでも問題ありません。「天然型のほうがからだによさそう」と思う方もいるかもしれませんが、厚生労働省が推奨している基準は、合成型の葉酸を対象としています。必ずしも高価な食事性葉酸にこだわる必要はありません。
ただし、合成葉酸は体内での吸収率が高いため、摂り過ぎないよう注意が必要です。パッケージに記載された目安量を必ず守りましょう。
葉酸についてよくある質問
妊娠中の葉酸の摂り方に関して、よく寄せられる疑問にお答えします。
葉酸サプリは飲まない方がいいと聞いたのですが本当ですか?
「葉酸サプリは飲まない方がいい」という情報は誤りです。葉酸は食事からも摂取できるものの、妊娠初期は普段よりもたくさんの量が必要です。
国としても、食事では不十分な量を補うために、葉酸サプリメントを推奨しています。
添加物が気になる方もいるかもしれませんが、国内で製造・販売されるサプリメントには、食品衛生法で使用が認められた添加物のみが使われています。健康への悪影響がないとされる量も設定されているため、過度に心配する必要はありません。
葉酸のとり方について心配な方は、妊婦健診で医師や助産師に相談するといいでしょう。
参考:厚生労働省|食品添加物
葉酸の摂りすぎにも注意が必要ですか?
葉酸は摂り過ぎにも注意が必要です。
葉酸は水溶性のビタミンです。余分なものは体外に排出されるため、通常の食事で過剰摂取になるリスクは低いとされており、現在のところ、食事性葉酸による健康被害は報告されていません。
ただし、サプリメントであまりにもたくさんの量を摂ると、ビタミンB12欠乏症のサインを隠してしまう可能性があると報告されています。
ビタミンB12が欠乏すると、脳や脊髄に障害が起こるリスクがあります。
葉酸サプリメントの1日上限量は30〜64歳では1,000μg、その他の年齢では900μgまでが目安です。推奨量である1日400μgを守れば、過剰摂取の心配はありません。
妊娠に気づいてから飲み始めるのは手遅れですか?
神経管閉鎖障害は、葉酸不足だけが原因ではありません。
ただし、妊娠12週までは赤ちゃんの神経管が作られる重要な時期です。葉酸には貧血予防や流産防止にも重要な役割があると言われているため、妊娠が発覚した時点で、できるだけ早く葉酸サプリメントを摂取しましょう。
おすすめの葉酸サプリはありますか?
1日400μg摂取できれば、どの葉酸サプリメントを選んでも構いません。高価なものである必要はなく、手に取りやすい価格の商品で十分です。
葉酸だけを補給したい方は、大塚製薬の「ネイチャーメイド 葉酸」が選択肢のひとつです。お手頃価格で1日2粒で葉酸400μgをしっかりと摂取できます。
葉酸だけでなく、鉄やカルシウムといった妊娠中に不足しがちな栄養素も補いたい方は「ディアナチュラスタイル 葉酸✕鉄・カルシウム」を選ぶのもいいでしょう。ただし、医師から鉄剤を処方されている場合は、鉄分の摂り過ぎになる可能性があるので注意が必要です。
葉酸摂取を意識して、先天的な病気から赤ちゃんを守ろう
葉酸は、赤ちゃんの神経管形成に欠かせない栄養素です。赤ちゃんを病気から守るために、妊娠初期は食事だけでなくサプリメントも組み合わせて必要量を補いましょう。
また、葉酸は貧血予防や流産防止にも役立ちます。ママ自身にも大事なので、妊娠初期を過ぎたあとも葉酸を意識して、ご自身と赤ちゃんの健康を守りましょう。
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