新居 信子
1993年日本赤十字社助産師学校を卒業。日本赤十字社医療センター、東京大学医学部附属病院、東京リバーサイド病院、永寿総合病院にて助産師として勤務し、産婦人科病棟やNICUなどで臨床経験を重ねる。
2017年に開業し、2023年8月からは足立区綾瀬にてノア助産院を運営。助産師、口腔機能支援士、口育士の資格を持つ。
ご家族全員に寄り添い、赤ちゃんの健やかな発達を支える、ノア助産院。
今回は助産師の新居信子さんに、お話を伺いました。
赤ちゃんの将来の健康を左右する「舌を使った哺乳」の重要性や、パパの支援・グリーフケアまで含めた、家族全員に寄り添うケアの根底にある想いとは──。
占い師に「天職になるよ」と言われて。助産師として歩み続けた意外なきっかけ
━━ 助産師を目指したきっかけを教えてください。
新居信子さん(以下、新居) 看護学校の卒業を控えた冬ごろに「もう一つライセンスを取りたい」と思い、助産師学校を受験しました。
ただ、助産師の資格を取って働き始めてからも、最初はあまり楽しくなくて…。3年目の頃、残業の多さや仕事のキツさから「看護師の方が向いているのかな」と、本気で助産師を辞めることを考えていました。
━━そこからどうして続けようと思われたのですか?
新居 ある日の仕事終わりの深夜、渋谷のセンター街にいた手相占いの方に見ていただいたんです。私が助産師だと言わずにいたところ、その方に「看護師が向いているね」と言われました。そして、続けて「産婆(助産師)の方が向いている。やってみたら? 天職になるよ」と言われました。
すでに助産師として働いていたので驚きましたが、その一言で、これは私の天職なんだと自分の中で腑に落ちて、それから今までずっと続けてくることができました。
産後1ヶ月以降も続く、ママの不安を支えたい
━━助産院を開業された理由を教えてください。
新居 病院にいると、助産師が関われるのはせいぜい産後1ヶ月までです。そこで「ママたちの不安や問題は1ヶ月を過ぎてから本格的に始まるのでは?」「ママたちは、その後の疑問をどうやって解決しているんだろう?」 と気になったのがきっかけでした。

新居 墨田区で2017年に助産院を開業しました。しかし、コロナ禍でママや赤ちゃんの外出が難しくなり訪問ケアが中心となったため、一度閉業し、1年ほど自宅のある葛飾区で出張専門として活動していた時期もあります。
その後、世の中のニーズを考えたときに日帰りでゆっくり休める場所の必要性を強く感じ、2023年8月に改めて足立区で建物を構え、再スタートを切る運びとなりました。
━━実際に地域で活動してみて、いかがでしたか?
新居 病院時代は時間の制約がありましたが、開業してからは一対一でじっくりお話が聞けるようになっています。
産後ケアは、赤ちゃんの成長発達をともに喜ぶ時間に
━━ノア助産院の産後ケアには、どのような特徴がありますか?
新居 よく「産後ケアは赤ちゃんを預かるだけだから楽でしょう」と言われることもありますが、私はそうは思いません。
ノア助産院では、お子さんを預かっている間、ただ寝かせておくだけでなく、成長発達につながるケアを提供しています。
━━例えば、どのようなことをされているのですか?
新居 月齢に応じた遊びや寝返りの練習、絵本の読み聞かせなど、その子が今何を必要としているかを見極めて関わります。2025年12月からは保育士さんも加わり、より専門的な視点を取り入れています。
以前、4ヶ月になっても喃語(なんご)を話さなかった子がいらっしゃったのですが、ママに関わり方をお伝えしたところ、1週間後にはおしゃべりするようになったこともあります。
ママがお休みしている間の赤ちゃんの様子を共有することで「この子、こんなことができるんだ!」という発見や喜びを共有したいと思っています。
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━━実際に利用された方からは、どのような声が届いていますか?
新居 墨田区から足立区へ移転した後「ノア助産院さんがなくなっちゃったと思って、探してきました」と追いかけてきてくださるリピーターの方もいらっしゃいます。
また「赤ちゃんを預けていて、隣の部屋から楽しそうな声が聞こえてきて安心した」という声をいただいたときは、とても嬉しかったですね。
「舌を使った哺乳」で口腔機能の土台を作りたい
━━最近は「舌を使った哺乳」の支援を強化されているそうですね。
新居 きっかけは、あるママに授乳のケアをしていたことです。痛みのない正しい飲ませ方をお伝えして一緒に行いました。
すると、その方が驚いた表情で「お乳を吸われている感覚が初めてあります」とおっしゃったんです。
━━「初めて吸われた」というのは、それまでどういう状態だったのでしょうか?
新居 その方は母乳がよく出るタイプでした。なので、赤ちゃんは一生懸命吸わなくても、勝手に流れてくる母乳をただ飲み込んでいたんです。
例えるなら、これまでは「出てくるものを流し込んでいる状態」だったのが、初めて「自らの力で吸い上げている状態」になったということですね。この感覚の違いに、お母さん自身も、そして私自身も大きな衝撃を受けました。

新居 私たち助産師は「母乳が必要な量だけ飲めていればいい」という考え方をしがちです。しかし、この経験を通じて、量だけでなく舌を使って飲めているかという点が重要だと確信しました。
実際、乳腺トラブルを繰り返していたママも、この舌を使った哺乳を実践することで、夜中に起きていたトラブルが劇的に改善しました。
━━そこから口腔機能について学び始めたのですね。
新居 はい。このケアがなぜ効果的なのかというエビデンスを求めて辿り着いたのが、歯科業界でした。より専門的な知識を深めるために「口育士」や「口腔機能支援士」といった資格を取得し、現在は大学院で研究もしています。
口腔機能の発達は、離乳食が始まってからではなく、哺乳期から始まっています。正しく舌を使って飲むことは、将来の食べる力や話す力、呼吸、そして姿勢にまでつながります。しかし、歯科医師や歯科衛生士の方が介入できるのは、主に歯が生え始める離乳食期以降です。
一生の健康の土台を整えるために、哺乳期の初期段階から助産師が口腔機能の視点を持って関わることは、子どもたちの将来にとって大きな意味を持つと考えています。
パパの悩みもグリーフケアも。
━━ママだけでなく、パパへの支援も行っているとお聞きしました。
新居 赤ちゃん訪問の際、パパから「僕の話も聞いてください」と言われたことがきっかけで、定期的にパパの会を開催しています。パパ同士で仕事と家庭の両立について話したり、私が抱っこ紐の使い方や絵本の読み聞かせ方をお伝えしたりしています。
━━グリーフケア(大切な人を亡くした方へのケア)も大切にされているそうですね。
グリーフケアを受けられる助産院は、まだ少ないのが現状です。ノア助産院では、お話しやすい環境を作り、完全プライベートな空間でお話を伺います。
「その子の存在をなきものにしたくない」という想いで、お写真を見せていただいたり、ご家族全員の心の様子を確認したりしながら、一歩ずつ進むお手伝いをしています。
安心できる空間で、誰にも言えない気持ちも吐き出せる場所
━━最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
新居 助産院はハードルが高いと感じるかもしれませんが、全然そんなことはありません。当院は完全予約制で、お話を伺うときは一人ひとりプライベート空間を作るように心がけています。
そして、医療者と利用者という壁を作らず、近所のスーパーの特売日の話もするくらい、人と人との関わりを大切にしています。

新居 産後ケア事業などは対応エリアが決まっていますが、特に、舌を使った哺乳について専門的に対応できる人はまだ少ないため、エリア外であってもできる限り対応するようにしています。
ノア助産院の公式LINEで「足立区産後ケア希望」「舌を使った飲ませ方」といった簡単なキーワードを送っていただくだけで、やり取りを始められるので、気軽にメッセージを送っていただきたいです。
みなさんの心が少しでも軽くなるよう、人として寄り添い、一緒に解決策を考えていきたいと思っています。
ノア助産院

| 住所 | 東京都足立区綾瀬2-11-4 第2フラワーコーポ1階 |
|---|---|
| 電話 | 090-1619-9811 |
| 公式LINE | https://line.me/R/ti/p/@gbf1874q |
| 公式ホームページ | https://www.noa-jyosanin.net/ |

